ヘルニアセンターのご案内
神奈川横浜未来鼠径ヘルニアセンターは、2022年11月28日より診察開始いたしました。ヘルニア外来をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
また、当院ヘルニア外来は、通常の外来だけでなく、鼠径ヘルニアに特化した 「神奈川横浜未来鼠径ヘルニアセンター」を開設いたしました。
ヘルニアについて
ヘルニアとは、臓器(腸管や脂肪組織)の一部または大部分が、体壁や体内の組織のスキマを通り、本来あるべき場所ではない部分にはみ出し逸脱した状態のことです。一般的に腹部や腰、大腿といった場所に多く発生します。
以下、外来で扱うヘルニアの種類となります。

鼠径ヘルニアとは?
鼠径ヘルニア(脱腸)とは、腿の付け根(鼠径部)の筋肉・筋膜が弱くなり、お腹の壁にスキマ(穴)ができて、腸などの一部が脱出したものです。お腹に力を入れたときや立ったときに鼠径部がふくらみ、痛みを感じることがあります。
ヘルニアを構成する3大要素
- へルニア内容(小腸・大網・大腸・卵巣など)
- ヘルニア嚢(腹膜。この中に腸などのヘルニアの内容が入っている)
- ヘルニア門(ヘルニア嚢の出口)
鼠径ヘルニアになりやすい人の特徴
- 中高年男性、やせ型の高年女性
- 咳をよくする人、妊娠している人、激しい運動をする人
- 便秘症、泌尿器科の症状がある人、喘息や慢性疾患がある人
- 職業柄お腹に力がかかる人、立ち仕事に従事する人
鼠径ヘルニアの治療法について
一度お腹の壁にスキマ(穴)ができて鼠径ヘルニアになってしまうと、お薬では治りません。
治療法は手術治療のみです。鼠径ヘルニアは絶対に手術が必要というものではありません。しかし、放っておけばだんだんと膨らみは大きくなります。
脱出した腸をそのままにしておくと、腸の通りが悪くなり、腸閉塞をおこすこともあります。とくに問題なのは、ヘルニア嵌頓を起こした場合です。嵌頓(出口のところで脱出した腸が強く締めつけられる)を起こすと鼠径部がこぶ状にふくれ、激しく痛みます。さらに症状が進むと腸管壊死(ちょうえし:腸が腐ってしまうこと)になり、緊急手術(腸管切除)が必要になります。
そのような症状を起こさないためには、手術をする必要があります。
手術はどんなものがあるのか?
お腹の壁にできてしまったスキマ(穴)を塞ぐ手術です。
以前は「従来法」と呼ばれる周囲の組織(筋肉や筋膜)を糸で縫い寄せてスキマを塞ぐ方法が多く採用されていました。しかしこの方法は術後の痛みやつっぱり感が比較的強く、再発率も10%と高いです。現在は、メッシュ(人工膜)を用いてスキマを塞ぐ方法が主流となっています。つっぱり感はほとんど無く、再発率は約1%前後と成績も良好です。
当院では、傷が小さく痛みの少ない、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を行っています。
年齢、全身状態、既往症などによって腹腔鏡での対応が厳しい場合もございますので、患者さま一人ひとりと相談し、より良い手術方法を選択しています。
鼠径ヘルニアの手術については、以下のとおりです。
(前方アプローチ)鼠径ヘルニア修復術でメッシュ(人工膜)を用いる方法
鼡径部の皮膚を約5~6cm切開し、ヘルニア嚢という袋の出口をしばり、鼠径部の弱いところを補強するのにメッシュ(人工膜)を用いる方法です。麻酔は通常、全身麻酔もしくは下半身麻酔の脊椎麻酔で行います。手術時間は1時間前後で、つっぱり感がほとんど無く術後疼痛も比較的少なく、比較的早期に日常生活に戻ることができます。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(腹腔内到達法TAPP法)
全身麻酔下で行う手術です。へその部位に5mmの穴(創)を開けて、お腹の中に二酸化炭素のガスを入れてふくらまし、腹腔鏡カメラを挿入してお腹の中の映像をテレビモニタに写しながら観察します。ほかに2か所、5mmの穴(創)を開け、ここから棒状の細長い手術器具(鉗子)をお腹に差し込んで手術するのが腹腔内到達法(TAPP法)です。
手術時間は30分~60分前後です。つっぱり感は無く痛みも少ないので、早期に日常生活に戻れます。まず、腹腔鏡を用いてヘルニアを確認します。次に、ヘルニア部分に出ている腸と腹膜を内側に戻し、ヘルニアの穴を確認して、腹膜と筋肉の間に補強材をおいて固定します。腹腔鏡手術では、鼠径ヘルニアになりやすい3つ(内鼠径ヘルニア、外鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア)の弱い部分を全てしっかりと覆うことができます。(図1)


入院期間
通常は、手術前日の午後に入院して、翌日手術を行い、術後は問題なければ手術翌日〜数日の間に退院となります。(入院期間3〜5日間)
また近年の腹腔鏡手術技術と全身麻酔の医療技術発展により、鼠径ヘルニアなどの手術は、術後の患者様の状態をきわめて良好に保つことができるため、日帰り手術を行える場合もございます。日帰り手術が行えれば、午前中に手術をして午後には自宅へ帰ることができるので、長期休暇を取得する必要はありません。年齢、全身状態、既往症などを考慮しておりますが、入院期間を短くしたい方は診察時にご相談ください。
※症状によっては、日帰り手術が行えない場合がございます。ご了承願います。
鼠径ヘルニア手術特有の合併症・偶発症
どの方法で手術をしても、ヘルニア再発の可能性があります。メッシュを使わない方法では再発率は20%にも達するという報告があります。腹腔鏡下ヘルニア修復術でも0.5~1%に再発があります。また、術後の疼痛や違和感は、術式によって大きく異なります。(感じ方には個人差もあります。)
- 出血
- 神経損傷
- 精管・精巣動静脈損傷
- 腸管・膀胱などの他臓器損傷
- 皮下出血(内出血)
- 陰嚢・鼠径部の腫張(浸出液や血液などの貯留)
- 陰嚢水腫
- 創感染
- メッシュ感染
- 癒着による腸閉塞
手術後の注意
手術により鼠径部の弱いところを補強しますが、手術後1ヶ月くらいはあまり重いものを持ち上げたり、腹圧をかけたりしない方が良いでしょう。
日常生活(散歩、軽い運動、座業など)は、個人差もありますが退院後から可能です。詳しいことは主治医と相談しましょう。
戸塚共立第1病院とALOHA外科クリニック
戸塚共立第1病院では、毎週木曜日にALOHA外科クリニック・新谷 隆(にいや たかし)院長に診療いただいております。
ALOHA外科クリニックは、東急目黒線「不動前駅」より徒歩4分のところにあります。仕事などで忙しい、または経済的に大きな負担をかけたくない患者様のために、胆のう・鼠径ヘルニアの日帰り手術を積極的に行っており、実績が多数ございます。
新谷院長のプロフィールをはじめ、ALOHA外科クリニックのホームページにつきましてはこちらをご覧ください。
医師紹介
村井 紀元(院長)
専門分野:消化器外科
- 日本外科学会 外科専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本肝胆膵外科学会 評議員
- 日本内視鏡外科学会技術認定医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 難病指定医
非常勤医師
- 新谷 隆(ALOHA外科クリニック)